音楽現代20051月号・コンサート クリティーク
原田陽&イェルク・デームス デュオ・リサイタル

(中略)
原田のヴァイオリンは、線は細いものの実にノーブルだ。演奏も丁寧。表現は自然で誇張のないのが良い。“音楽的な育ちの良さ”を感じさせる。ただ、お祖父さんのような大家、デムスとのデュオということも影響しているのか、総じて固さがあり、伸びやかさに欠けるのが惜しい。中では、ドヴォルザークに原田の特徴が良く出ていた。表情が良く、パッションのバランスも良い。センティメンタルな叙情性も品の良い響きで瑞々しく歌われる。第3楽章の素朴な美しさ。そして終楽章第3部では、両者の競演が感興を盛り上げる。

 諏訪節生



レコード芸術200410月号 新譜月評
【準推薦】

1982年生まれというからまだ22歳(収録時は21歳)の原田陽がイェルク・デムスのピアノとのデュオでモーツァルトの変ロ長調ソナタK378、ブラームスの第2番イ長調作品100、そしてデムスのハ短調ソナタ(1985年作曲)を好演している。昨年1123日に東京銀座の王子ホールで行ったリサイタルのライヴ録音。パリを中心にヨーロッパで演奏活動を展開していう原田のデビュー・アルバムということだ。残念ながら東京での演奏会は聴いていないが、このディスクで聴く原田の音楽表現の素直さ、自然さは、超絶的なテクニック優先主義が横行するいまどきの若手演奏家のなかにあってはかえって新鮮で清々しく、また、こうした演奏によってこそ伝わってくる音楽の美しさ、音楽の喜びなどを聴くことができる。巨匠デムスと原田の音楽表現がこれほどまでに意気投合し、ぴったりとした呼吸、そして曲作りで共感しあっているのを聴くのも感動的だ。もちろん、これはデムスの見事なサポートを言ってよいのかもしれないが、ブラームスなどでは両者が強く自己主張しながらデュオを高揚させてゆくところを見せるなど、見事なアンサンブルと見なければならない。原田のヴァイオリンは大変に繊細で、俗な言い方をすれば、線は太いほうではない。しかし、音はきらいらと輝いている。派手な鋼鉄系の輝きではなく、いわば絹糸やヴェルヴェットの光沢といった方がよいだろう。それが伸びやかに飛翔して美しい旋律線を描きあげている。優美で気品のある音だけではなく、勘所ではシャープな切れ味のフォルテを出す。それでも決して激情的にならず、あくまでも美しい音、美しい響きを追求しようと言う演奏姿勢がセンスのよいコントロールを効かせている。デムスのソナタは〈エレジー〉〈スケルツォ・ファンタスク〉〈ノクチュルヌ〉〈フィナル〉と題された性格的4楽章からなるが、構成は19世紀ロマン主義様式に即したもので、それだけに親しみやすさもあり、また、特殊奏法といったものもほとんど含まれず、現代音楽ではあるが演奏者の原田も十分に共感をもって作品の美しさを引き出している。もちろん、この演奏は作曲者自身のピアノによる共演であり、おそらくひとつの理想的な姿が表現されているに違いない。ヴァイオリンはときおり重音奏や幅広い音域にわたる技巧的な楽句が織り込まれており、決してやさしい曲ではないが、基本的にヴァイオリンは流麗な線で紡ぎ出された旋律が支配しており、原田はそれをたっぷりとした響きで演奏している。

平野 昭

音楽現代200410月号 今月の3枚のCD より


ヴァイオリンの原田陽とピアノのイェルク・デムスが20031123日に王子ホールで開いたリサイタルのライヴ録音盤が発売された。1982年生まれの原田と1928年生まれのデムスが、年齢の差を感じさせない、実に気持ちの良い演奏を繰り広げている。透明感のある美音と素直で伸びやかな表情のヴァイオリンと、作品を理解し尽くしているようなニュアンスに富んだ(無意味に鳴らされていると思えるような音がひとつもない)ピアノが、モーツァルトやブラームス、そしてデムス自身のユニークでロマンティックなソナタをたのしく聴かせてくれる。特に原田は、若いながら技術的な安定度に加えて、豊かに音楽を感じている心が聴き取れ、それが自然で瑞々しい表情につながっている。当日のアンコールであろう、原田によるクライスラーの「レチタティーヴォとスケルツォ」も、デムスによるドビュッシーの「月の光」も豊かな余韻として楽しめる。(=準推薦)

福本 健



音楽現代20048月号・コンサート クリティーク
原田陽ヴァイオリン・リサイタル

アメリカとパリで研鑚を積んだ原田陽のリサイタル。ピアノは吉田あかね。とても良い演奏であった。82年生まれの原田のヴァイオリンは、すでに燻し銀がかっている。作品に対するイメージをそのまま音に託すことのできるアーティストだ。特に圧巻だったのは、ルクー【ソナタ】ト長調。このエネルギッシュな作品を、表面的な力強さだけではなく、心の裡から溢れ出る情熱とも絡め合わせて、緊張度の高いクライマックスを形成し、聞き手に深い感動を与えた。(略)

                         道下京子


音楽現代20042月号・コンサート クリティーク
イェルク・デームス&原田陽デュオ・リサイタル

イェルク・デームスのピアノと、21歳のヴァイオリニスト原田陽のデュオである。経験豊富なデームスが若い原田の新鮮さをいかに取り込むか、また原田がデームスの芸術から何を引き出すかが聴きどころである。その意味で、最後のブラームス/ヴァイオリン・ソナタ第2番に大きな成果がある。両者一体の音楽となり、作品のもつ女性美の艶やかさが表現された。デームスが抒情性豊かに旋律を展開すれば、原田は優美な表現で応える。この掛け合いの良さがこの日一番感じられた瞬間だ。情熱のこもった舞曲ではヴァイオリンの弾んだ気持ちも伝わる。ベートーヴェンの第3番ソナタは、冒頭のため気負いもあるのだろう、ヴァイオリンの表現に硬さがうかがえた。より自由な気持ちで音楽展開を望みたい。デームス/ソナタ・ハ短調は、エレジーやノクターンなど耳に心地よく響く。モーツァルトの変ロ長ソナタは、優雅な表情を強調すれば音楽が一層引き立つに違いない。次は原田の自由なソロを聴いてみたい。

宮沢昭男


音楽現代
200210月号・コンサート クリティーク

原田陽 ヴァイオリン・リサイタル

20歳を迎え、今回のリサイタルは成人して最初にわが国で開くものという。プログラムに驚いた。タルティーニ「悪魔のトリル」、イザイ「無伴奏ヴァイオリンソナタ」、ラベル「ツィガーヌ」ほかである。卓抜な技量をもっている。やや固さもあったが、「悪魔のトリル」では、右手のボウイングと左指のバランスが、「ツィガーヌ」では、ジプシー固有の技巧とともに、華麗の表現が冴える。原田は闘志剥き出しに音楽を作るタイプではないようだ。でも内面にはメラメラ燃えるものがあるのだろう。イザイの無伴奏ソナタで、毅然とした音楽の表現にそれを見た。(略)

宮沢昭男